今回は重加算税の賦課要件について、根拠規定である国税通則法68条1項を読み解き整理することで理解を深めます。各要件の実務上の要点も解説します。
国税通則法68条1項の条文
賦課要件の整理
この規定を読み解くと、重加算税の賦課要件は次の4つに整理できます。
- ① 過少申告加算税の賦課要件を満たしていること(更正等予知がない場合を除く)
- ② ③及び④の行為が「納税者」によるものであること(行為主体)
- ③ 国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装していること
- ④ ③の行為に基づき納税申告書を提出していること(因果関係)
各要件の実務上の要点
重加算税の適用が問題となるのは税務調査において過少申告の事実が把握されたときなので、実務においてこの要件が単独で争われることは多くありません。
この要件の重要なポイントは、②〜④の要件を満たす過少申告の事実があったとしても、調査による指摘があるまでに自主的に修正申告をすれば重加算税は課されないという点にあります。
隠ぺい又は仮装の行為と、これに基づく申告書の提出が「納税者」によって行われることが必要です。重加算税制度の趣旨が納税義務違反の防止・抑止にあることから、行為主体を「納税者」に限定しているものと考えられます。
この点は、更正決定等の期間制限の特例である通則法70条5項が行為主体を限定していないこととの対比で論じられることが多いです。特に、「納税者」以外の者が行った隠ぺい・仮装の行為をどのような場合に「納税者」の行為と同視できるか、という論点で議論されます。
実務において最も争われる要件です。いかなる行為が「事実の隠ぺい又は仮装」に該当するかについては、数多くの訴訟が提起されてきました。
国税庁も事務運営指針という形で該当事例を列挙していますが、あくまで例示にとどまります。逋脱犯規定や通則法70条5項における「偽りその他不正の行為」要件との対比も重要な論点です。
「事実の隠ぺい又は仮装」という行為と「過少申告」という結果を結びつける、いわゆる因果関係の要件です。訴訟レベルで単独で争われることは少ないものの、実務上は重要な意味を持ちます。
例えば大規模法人では、多種多様な経済活動の中で「隠ぺい又は仮装」と認定できる行為があった場合でも、過少申告という結果との間に因果関係が認められなければ重加算税は賦課できません。
各要件には様々な論点があり、参考となる重要裁判例も数多く存在します。次回以降は各論点の整理・考察、重要裁判例の分析、理論と実務との距離感など、多面的に検討していきます。
通則法68条1項を読み解くと、重加算税の賦課要件は①過少申告加算税の要件充足、②「納税者」による行為、③事実の隠ぺい又は仮装、④これに基づく申告書の提出の4つに整理できます。実務上最も争われるのは③の要件であり、今後の考察の中心となります。