第4回 重加算税の賦課要件(過少申告の認識の要否) 事例①

シリーズ:重加算税制度について考える

前回は、重加算税の主観的要件として「過少申告の認識(故意)は不要」であることを理論的に説明しました。今回は理論を実際の事例に当てはめ、具体的なイメージを持っていただきます。

📌 前回のポイント(第3回)
必要なのは「隠ぺい又は仮装の行為」に対する故意のみ。「過少申告」をしようという認識(故意)は不要。
事実を隠ぺい・仮装する意図さえあれば、主観的要件は満たされる

事例① 工事責任者による原価の付け替え

事例1 工事責任者による原価の付け替え(建設会社)

規模の大きな建設会社では、利益率の高い工事もあれば薄利・赤字の工事も発生します。現場の工事責任者にとって、赤字工事は上長からの評価にも影響するため、赤字工事から黒字工事への原価の付け替えが行われることがあります。

赤字が見込まれるA工事に関する外構工事費用について、外構業者に依頼して請求書の工事件名を「B工事 外構作業」と書き換えさせます(B工事は黒字工事)。この請求書を経理部にそのまま渡すと、B工事の原価として経理処理されます。

B工事完成・A工事未成のまま決算期末を迎えると、本来A工事の原価として未成工事支出金に計上されるべき費用が、B工事の原価として当期の損金になってしまいます。

請求書の件名を
「B工事」に書き換え
(仮装行為)
経理部がB工事原価
として処理
未成工事支出金の
計上漏れ
(過少申告)
💭 工事責任者の真の意図

赤字工事の原価を別工事に付け替え、黒字に見せかけること——課税所得を少なくしようという意図は一切なかったと考えられます。

✅ 重加算税が課される

「工事件名の書き換え」という仮装行為が原因で、「未成工事支出金の計上漏れ」という過少申告の結果が生じているため、重加算税の賦課要件を満たします。

過少申告の意図がなくても、事実を仮装する意図とそれに起因する過少申告の結果があれば足ります。

事例② プロジェクト担当者による予算消化目的の費用前倒し

事例2 予算消化目的の費用前倒し(大規模会社)

事業部ごとに予算管理がなされる大規模会社では、「予算を使い切らないと翌年の予算が削られる」という意識が現場担当者に生まれがちです。その結果、年度末近くの予算消化として、翌年度に発生予定の費用を前倒し計上するケースが発生します。

プロジェクト担当者が取引先と通謀し、翌年度に納品・役務提供が完了する取引について、請求書や納品書等の件名・日付を書き換えさせ、あたかも今年度に発生した費用のように装います。

請求書・納品書の
件名・日付を書き換え
(仮装行為)
翌年度の費用が
今年度に計上される
今年度の費用過大計上
(過少申告)
💭 プロジェクト担当者の真の意図

翌年度の予算確保のために今年度の予算を消化すること——「過少申告」をしようという意図は認められないと思われます(税務に通じていれば多少の認識はあるかもしれませんが)。

✅ 重加算税が課される(事例1と同様)

「件名や日付の書き換え」という仮装行為が原因で、翌年度費用の今年度計上という過少申告の結果が生じているため、重加算税の賦課要件を満たします。

こちらも過少申告の意図の有無にかかわらず、要件は充足されます。

✅ 2つの事例から見えること

今回取り上げた2事例はいずれも比較的大規模な会社で散見されるケースで、期間損益に関わる仮装行為が共通点です。行為者の動機は「赤字隠し」「予算消化」であり、税金を安くしようという意図はありません。それでも「事実の仮装」とそれに起因する「過少申告」の結果が生じている以上、重加算税の賦課要件を満たします。前回の理論が実務でどう機能するかを示す好例といえます。

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第5回 重加算税の賦課要件(過少申告の認識の要否について・事例編②)