減価償却について

減価償却は、固定資産の取得コストを使用期間にわたって費用配分する処理です。金額が大きく、かつ判断を伴う論点が多いため、法人税調査における定番の確認項目でもあります。この記事では制度の基本から実務上の判断ポイントまでを整理します。

 本記事は2026年8月時点の法令・通達に基づく一般的な解説です。令和8年度税制改正の内容を含みます。

直近の主な改正点

まず、実務上インパクトの大きい直近の改正・変更点を確認しておきましょう。

項目改正・変更内容適用時期
少額減価償却資産の特例
(措法67の5)
取得価額基準を30万円未満 → 40万円未満に引上げ。従業員数要件を500人以下 → 400人以下に引下げ。適用期限を令和11年3月31日まで3年延長。年間300万円の上限は据置き 令和8年4月1日
以後取得分
特定生産性向上設備等
投資促進税制
新設。即時償却または税額控除(原則7%、建物等4%)を選択適用。投資規模の下限は原則35億円以上(中小企業者等は5億円以上) 令和8年度~
DX投資促進税制 廃止(新規の計画認定は終了) 令和7年3月31日
をもって終了
中小企業経営強化税制 C類型(デジタル化設備)廃止、E類型(経営規模拡大設備)新設。B類型の投資利益率要件を年平均5%以上 → 7%以上に引上げ 令和7年4月1日~
償却資産に係る
固定資産税の免税点
課税標準額150万円 → 180万円に引上げ(家屋は20万円 → 30万円) 令和9年度分以後
中小企業投資促進税制 適用期限を令和9年3月31日まで延長(内容は概ね従前どおり) 継続適用中
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誤りやすいポイント

少額減価償却資産の特例の40万円基準は「事業年度単位」ではなく「取得日単位」で判定します。令和8年3月31日以前に取得した資産は、たとえ令和8年度の申告であっても30万円未満基準(従業員500人以下)で判定します。

12月決算法人や個人事業主は、同一事業年度内に30万円基準と40万円基準が混在するため、固定資産台帳上で取得日による区分管理が必須です。

減価償却とは

基本的な考え方

減価償却とは、固定資産の取得に要したコストを、その資産の使用可能期間(耐用年数)にわたって費用として配分する会計処理をいいます。取得時に一括して費用化するのではなく、収益の獲得に貢献する期間にわたって分割計上することで、費用収益対応の原則を実現します。

たとえば300万円の機械を6年間使用する場合、取得年度に300万円全額を費用計上すると、その年度だけ極端に利益が減少し、翌年度以降は同じ機械が収益を生んでいるのに費用がゼロという不自然な損益になります。減価償却はこの歪みを是正する仕組みです。

減価償却の目的

  • 費用収益対応の原則:資産の使用期間にわたってコストを配分し、各期の損益を適正に表示する
  • 資産価値の適正表示:貸借対照表上の固定資産を実態に即した金額で表示する
  • 自己金融効果:現金支出を伴わない費用であるため、償却額相当の資金が社内に留保される
  • 課税所得の適正化:法人税法上の損金として認められ、キャッシュフローの改善につながる

減価償却の対象となる資産・ならない資産

時の経過または使用によって価値が減少する資産のみが減価償却の対象です。「非減価償却資産」に該当するものを誤って償却すると、全額が償却超過額として否認されます。

区分対象となるもの対象とならないもの
有形固定資産 建物、建物附属設備、構築物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品、船舶、航空機 土地、借地権、電話加入権
無形固定資産 ソフトウェア、特許権、実用新案権、商標権、営業権(のれん) 永久的な権利(借地権等)
生物 牛馬、果樹(成熟後)、茶樹等 販売目的の棚卸資産たる生物
その他 書画骨とう(時の経過で価値が減少しないもの)、建設仮勘定、取得後未稼働の資産

 美術品等については、取得価額が1点100万円未満のものは原則として減価償却資産として取り扱われます(法基通7-1-1)。100万円以上でも、時の経過により価値が減少することが明らかなものは償却可能です。

取得価額の決定

減価償却計算のすべての起点は「取得価額」です。ここを誤ると以後すべての年度の償却額が誤りとなるため、税務調査でも重点的に確認されます。

取得価額に含めるもの・含めなくてよいもの

取扱い具体例
取得価額に算入(必須) 購入代価、引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税、据付費、試運転費、その他事業供用のために直接要した費用
取得価額に算入しないことができる(任意) 不動産取得税、自動車税環境性能割、登録免許税その他登記・登録費用、固定資産税の精算金、契約解除に伴う違約金、建設利息、事業所税、借入金の利子(事業供用前の期間分)
取得価額に算入しない 土地とともに取得した建物の取壊費用(土地の取得価額へ)※取得後おおむね1年以内の取壊しの場合

 「算入しないことができる」項目は、算入しない方が早期の損金算入となり有利ですが、会計処理との整合が必要です。

取得価額の判定単位

10万円・20万円・40万円といった金額基準は、資産の「通常1単位として取引される単位」ごとに判定します。この単位判定は税務調査で最も争点になりやすい論点の一つです。

資産の例判定単位
応接セットテーブルと椅子を1組として判定(バラで買っても1セット)
カーテン1部屋ごとに使用しているカーテン全体で判定
パソコン本体・モニタ・キーボード等を一体として判定(一体で機能するもの)
機械装置1台または1基ごと。ただし生産ラインとして機能するものは全体で判定
書棚・ロッカー同時に多数購入しても1台ごとに判定

耐用年数の決定

法定耐用年数

税務上の耐用年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(耐用年数省令)により資産の種類・構造・用途ごとに定められており、企業が任意に短縮することはできません。

資産の種類構造・用途法定耐用年数
建物鉄骨鉄筋コンクリート造・事務所用50年
建物鉄骨鉄筋コンクリート造・工場用38年
建物木造・事務所用24年
建物木造・店舗用/住宅用22年
建物附属設備電気設備(蓄電池電源設備以外)15年
建物附属設備冷暖房設備(22kW以下)13年
機械装置食料品製造業用設備10年
車両運搬具普通乗用車(一般用)6年
車両運搬具軽自動車(貨物・一般用)4年
工具器具備品電子計算機(パソコン)4年
工具器具備品電子計算機(サーバー用)5年
ソフトウェア自社利用(複写して販売する原本以外)5年
ソフトウェア研究開発用のもの3年

 上表は代表例です。実際の適用にあたっては必ず耐用年数省令の別表を確認してください。

中古資産の耐用年数(簡便法)

中古資産を取得した場合、使用可能期間を見積もることが原則ですが、これが困難な場合には次の簡便法によることができます。

簡便法による耐用年数

【法定耐用年数を全部経過】
耐用年数 = 法定耐用年数 × 20%

【法定耐用年数を一部経過】
耐用年数 =(法定耐用年数 - 経過年数)+ 経過年数 × 20%

いずれも1年未満の端数は切捨て、計算結果が2年未満となる場合は2年とします。

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簡便法が使えないケース(調査で狙われる論点)

その中古資産の取得価額に対し、「再取得価額の50%」を超える資本的支出を行った場合は、簡便法を適用できず法定耐用年数によることになります(耐令3①但書)。

中古車の耐用年数を短くして早期償却するスキームでは、取得後に大規模な改造を行っているケースが多く、調査官はこの50%基準の充足状況を必ず確認します。

また、事業年度開始後に見積りを行うことなく法定耐用年数で償却を開始した場合、後から簡便法へ変更することはできません(取得事業年度における選択が必要)。

償却方法の選定と計算

資産の種類ごとの選択可能な償却方法

「有形固定資産はすべて定率法」と誤解されがちですが、平成10年度以降の度重なる改正により、建物・建物附属設備・構築物は定額法しか選択できません

資産の種類選択できる償却方法法定償却方法
(届出がない場合)
建物(平成10年4月1日以後取得)定額法のみ定額法
建物附属設備・構築物
(平成28年4月1日以後取得)
定額法のみ定額法
機械装置・車両運搬具・工具器具備品・船舶・航空機定額法 または 定率法定率法
無形固定資産(ソフトウェア等)定額法のみ定額法
生物定額法のみ定額法
リース資産(所有権移転外)リース期間定額法リース期間定額法
鉱業用減価償却資産定額法・定率法・生産高比例法生産高比例法

 個人事業主の場合、法定償却方法は原則として定額法です(法人と異なる点に注意)。

定額法

毎期一定額を償却する方法です。計算が単純で、費用の平準化に適しています。

計算式

償却限度額 = 取得価額 × 定額法の償却率

定額法の償却率は原則として「1 ÷ 耐用年数」を小数点3位で表したものです(耐用年数6年なら0.167)。

計算例:取得価額300万円/耐用年数6年/定額法

年度期首帳簿価額償却限度額期末帳簿価額
1年目3,000,000円501,000円2,499,000円
2年目2,499,000円501,000円1,998,000円
3年目1,998,000円501,000円1,497,000円
4年目1,497,000円501,000円996,000円
5年目996,000円501,000円495,000円
6年目495,000円494,999円1円(備忘価額)

 3,000,000円 × 0.167 = 501,000円。最終年度は備忘価額1円を残して償却を終了します。

定率法(200%定率法)

期首帳簿価額に一定の償却率を乗じる方法で、初期に多額の償却費を計上できます。平成24年4月1日以後に取得した資産については「200%定率法」(定額法償却率の2倍)が適用されます。

計算式

償却限度額 = 期首帳簿価額(未償却残高)× 定率法の償却率

ただし、上記により計算した金額が「償却保証額(=取得価額 × 保証率)」を下回る年度以後は、その年度の期首帳簿価額(改定取得価額)に改定償却率を乗じた一定額を毎期償却します(改定償却)。

計算例:取得価額300万円/耐用年数6年/定率法

耐用年数6年の定率法償却率は0.333、保証率は0.09911、改定償却率は0.334です。償却保証額は 3,000,000円 × 0.09911 = 297,330円 となります。

年度期首帳簿価額調整前償却額償却限度額期末帳簿価額
1年目3,000,000円999,000円999,000円2,001,000円
2年目2,001,000円666,333円666,333円1,334,667円
3年目1,334,667円444,444円444,444円890,223円
4年目890,223円296,444円
< 保証額
297,334円
(改定)
592,889円
5年目592,889円297,334円
(改定)
295,555円
6年目295,555円295,554円1円(備忘価額)

 4年目に調整前償却額296,444円が償却保証額297,330円を下回るため、改定取得価額890,223円 × 改定償却率0.334 = 297,334円で均等償却に切り替わります。

定額法と定率法の比較

比較項目定額法定率法
償却パターン毎期一定額初期に多く、逓減していく
初期の節税効果小さい大きい
計算の複雑さ単純改定償却の判定が必要
会計上の利益への影響平準的初期に大きく圧迫
適した場面収益が安定的に発生する資産(建物等)陳腐化が早い資産、早期の投資回収を図る場合
トータルの償却額同額(1円を残して全額償却)同額(1円を残して全額償却)

償却方法の届出と変更

  • 届出:新設法人は設立第1期の確定申告書の提出期限までに「減価償却資産の償却方法の届出書」を提出します。提出がなければ法定償却方法が適用されます。
  • 変更:償却方法を変更しようとする事業年度開始の日の前日までに「変更の承認申請書」を提出し、税務署長の承認を受ける必要があります。
  • 原則として、現在の方法を採用してから3年を経過していない場合、変更は認められにくい取扱いです。

事業年度の中途で取得した場合

月割計算

償却限度額 = 年間の償却限度額 × 事業供用月数 ÷ 事業年度の月数

月数は暦に従って計算し、1月未満の端数は1月として切り上げます。起算点は「取得日」ではなく「事業の用に供した日」である点が極めて重要です。

少額減価償却資産の取扱い

取得価額が少額の資産には、通常の減価償却に代えて早期に損金算入できる複数の制度が用意されています。有利不利の判断のためには、金額帯ごとの選択肢を整理しておく必要があります。

取得価額選択できる処理根拠・要件
10万円未満 ① 全額損金算入
② 一括償却資産(3年)
③ 通常の減価償却
法令133。使用可能期間1年未満のものも同様
10万円以上
20万円未満
① 一括償却資産(3年均等)
② 少額特例(全額損金)
③ 通常の減価償却
法令133の2 / 措法67の5
20万円以上
40万円未満
① 少額特例(全額損金)
② 通常の減価償却
措法67の5(令和8年4月1日以後取得。それ以前は30万円未満)
40万円以上 通常の減価償却のみ 特別償却等の適用可能性を別途検討

中小企業者等の少額減価償却資産の特例(措法67の5)

要件・内容令和8年3月31日以前取得令和8年4月1日以後取得
取得価額基準30万円未満40万円未満
常時使用する従業員数500人以下400人以下
年間損金算入限度額300万円300万円(変更なし)
適用期限令和11年3月31日まで
その他の要件青色申告書提出の中小企業者等(資本金1億円以下等)/貸付用資産は原則除外/別表十六(七)の添付が必要同左
⚠️

実務上の留意点

適用にあたっては、確定申告書に「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書(別表十六(七))」の添付が必須です。添付漏れは適用要件を欠くものとして否認対象になります。

令和4年4月1日以後に取得した「主要な事業として行われるもの以外の貸付けの用に供する資産」は、少額資産(10万円未満)・一括償却資産・少額特例のいずれからも除外されています。節税目的のドローン・LED・足場等のレンタルスキームを封じる改正です。

300万円の限度額は、事業年度が1年未満の場合、月数按分されます。

一括償却資産

取得価額20万円未満の資産は、その事業年度に取得したものを一括して、3年間で均等償却することができます。

計算式

損金算入限度額 = 一括償却対象額の合計 × その事業年度の月数 ÷ 36

  • 事業年度の中途で取得しても月割計算は不要(12か月分を計上できる)
  • 償却資産税(固定資産税)の課税対象外となるメリットがある
  • 途中で除却・売却しても、除却損は計上できず3年間の均等償却を継続する

特別償却・税額控除(租税特別措置)

政策目的に基づき、通常の償却(普通償却)に加えて割増しの償却を認める、あるいは税額から直接控除する制度が設けられています。適用期限のある時限措置であり、最新の内容を必ず確認してください。

現在活用できる主な制度(2026年8月時点)

制度名優遇内容適用期限・主な要件
中小企業投資促進税制 30%の特別償却 または 7%の税額控除 令和9年3月31日まで。税額控除は資本金3,000万円以下の法人・個人が対象。新品の機械装置(1台160万円以上)等。中古・貸付用は対象外
中小企業経営強化税制
(A・B・D類型)
即時償却 または 10%の税額控除(資本金3,000万円超は7%) 令和9年3月31日まで。設備取得前に経営力向上計画の認定が必要。B類型の投資利益率要件は年平均7%以上に厳格化
中小企業経営強化税制
(E類型:経営規模拡大設備)
機械装置等は即時償却/建物等は15%の特別償却(特定建物等は25%)または1%(同2%)の税額控除 令和7年度新設。売上高100億円超を目指す中小企業向け。取得価額1,000万円以上の建物・附属設備が対象に追加
特定生産性向上設備等
投資促進税制
即時償却 または 税額控除(原則7%、建物等4%) 令和8年度創設。経済産業大臣の確認が必要。投資規模の下限は原則35億円以上(中小企業者等は5億円以上)。税額控除限度は法人税額の20%、超過額は3年繰越可
カーボンニュートラル
投資促進税制
特別償却 または 税額控除 要件を厳格化のうえ2年延長
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廃止された制度(過去の資料をそのまま使わないこと)

DX投資促進税制:令和7年3月31日をもって廃止されました。新規の事業適応計画の認定は行われていません。

5G導入促進税制:同じく令和7年3月31日取得分をもって終了しています。

中小企業経営強化税制のC類型(デジタル化設備):令和7年度税制改正により令和7年4月1日をもって廃止されました。

特別償却と税額控除の選択

両者は選択適用であり、どちらが有利かは利益水準と将来の見通しによって決まります。

観点特別償却税額控除
効果の性質課税の繰延べ(トータルの償却額は変わらない)税額の永久的な減少
有利な場面当期に利益が集中し、翌期以降は減益見込み安定的に利益が出ている
キャッシュフロー初年度に大きく改善するが、翌期以降は償却費が減少初年度の減税額は小さいが恒久的
適用制限特になし法人税額の20%が上限(超過額は1年繰越可)
会計処理剰余金処分方式(準備金)も選択可税効果への影響なし

実務上は、当期を含めた3期程度の利益シミュレーションを作成して比較検討することが望まれます。繰越欠損金がある場合は特別償却をしても税負担が変わらないため、税額控除(またはいずれも適用しない)という判断になります。

資本的支出と修繕費の区分

既存の固定資産に対する支出が「修繕費」(当期の損金)か「資本的支出」(資産計上して減価償却)かの判定は、税務調査における最頻出の論点です。判定を誤ると多額の否認につながります。

基本的な区分

区分内容処理
修繕費通常の維持管理、または毀損した資産の原状回復のための支出支出事業年度の損金
資本的支出資産の使用可能期間を延長させる部分、または資産の価額を増加させる部分に対応する支出資産計上し、減価償却

判定フロー(法人税基本通達7-8-1〜7-8-5)

実務上は次の順序で判定します。上位のステップで判定がついた時点で確定します。

  1. 災害等により被害を受けた資産の原状回復費用か → 原状回復部分は修繕費
  2. 明らかに資本的支出(用途変更のための改造、避難階段の取付け、機械の部品を品質・性能の高いものに取り替えた場合の差額等)に該当するか
  3. 明らかに修繕費(建物の移えい・解体移築、機械の移設、地盤沈下による地盛り等)に該当するか
  4. その支出額が20万円未満か → 修繕費として処理可(形式基準)
  5. おおむね3年以内の周期で行われる修理・改良か → 修繕費として処理可(形式基準)
  6. その支出額が60万円未満、または前期末取得価額のおおむね10%相当額以下か → 修繕費として処理可
  7. 上記で判定できない場合 → 継続適用を条件に、支出額の30%と前期末取得価額の10%のいずれか少ない金額を修繕費、残額を資本的支出とすることができる(7:3基準)

この論点については、テーマ3-③「資本的支出と修繕費の区別について」でも詳しく解説しています。

資本的支出後の償却

  • 原則:資本的支出の額を「新たな減価償却資産の取得」とみなし、既存資産と同じ種類・耐用年数の資産として区分して償却する
  • 特例①:平成19年3月31日以前取得の既存資産に対する資本的支出は、既存資産の取得価額に加算する方法も可
  • 特例②:定率法適用資産に対する資本的支出は、翌事業年度開始時に既存資産と資本的支出を合算して1つの資産とすることができる

元国税調査官の視点

減価償却は、金額が大きく、かつ判断を伴う論点が多いため、法人税調査における定番の確認項目です。ここでは調査官がどのような着眼点で資料を確認するのか、そして納税者側でどのような備えをしておくべきかを整理します。

調査官の基本的な発想

調査官は「取引の実態と申告書の数字が一致しているか」を、証憑という客観的な資料で検証します。減価償却の分野では、意図的な仮装隠蔽よりも、判断の誤りや証憑の不備による否認が圧倒的に多いのが実情です。

したがって最大の対策は、「なぜその処理を選んだのか」を、処理をした時点で資料化しておくことに尽きます。調査時に慌てて説明を組み立てるのではなく、当時の判断過程が残っている状態を作っておくことが重要です。

① 事業供用日

調査官の見方

減価償却の開始は「取得日」ではなく「事業の用に供した日」です。特に決算期末直前に取得した資産について、調査官は次のような資料を突き合わせます。

  • 請求書・納品書の日付と、検収書・受領印の日付のズレ
  • 据付工事・電気工事の完了報告書、試運転記録の日付
  • 機械の稼働ログ、生産日報、シフト表
  • 車両の場合は自動車検査証の登録日、ナンバー交付日、ETC・給油の履歴
  • ソフトウェアの場合は本番稼働の稟議・議事録、ユーザーアカウント発行日
  • 固定資産税(償却資産)申告書の記載内容との整合
対策
  • 期末近くの取得資産については、事業供用日を裏づける資料(写真、検収書、稼働ログ)を取得の都度セットで保存する運用を行う
  • 倉庫に保管したまま年度をまたいだ資産は、正直に翌期からの償却開始とする。このような資産について使用していた旨の説明を行うことは非常に困難です
  • 建設仮勘定から本勘定へ振り替えた日付と、実際の稼働開始日の整合を確認しておく

② 資本的支出と修繕費の区分

調査官の見方

修繕費として一括計上された多額の支出は、必ず内訳を確認されます。総額だけの請求書は「内訳が確認できない=資本的支出の可能性を否定できない」と評価されやすく、不利に働きます。

  • 工事の見積書・仕様書を取り寄せ、原状回復か機能向上かを工事項目ごとに判定する
  • 外壁塗装で従前より高グレードの塗料(フッ素系等)に変更していないか
  • 空調・照明の更新で能力・省エネ性能が向上していないか
  • 間取り変更、用途変更を伴う内装工事が混在していないか
  • 形式基準(20万円未満・3年周期・60万円未満)の適用にあたり、支出単位を恣意的に分割していないか
対策
  • 工事業者に対し、見積書・請求書の内訳を「原状回復部分」「機能向上部分」に分けて記載してもらう。第三者が作成した資料に記載があるというだけで、調査官はその記載が正しいとの印象を持つものです。これだけで争点が大幅に減ります
  • 工事前後の写真を残す。原状回復であることの強い証拠になる
  • 判定に迷った支出は、判定フローのどのステップで結論を出したかを記録したメモを稟議書に添付する
  • 一度採用した処理方法(特に7:3基準)は継続適用する。年度によって都合よく変えると、恣意性を指摘される
☆ 調査官の本音

何をもって機能の向上、価値の向上といえるかについては、実は調査官自身も明確な根拠を持っていないことがほとんどです。請求書などの記載ぶりや金額の大きさなどから直感的に資本的支出に該当するものと考えているのが実情です。会社の事業内容や使用している事業用資産のことを一番よくわかっているのは会社内部の人間ですので、その支出があくまで資産本来の機能・効用を維持するための支出であることを自信をもって説明すれば、案外調査官の追及も楽にかわせるものです。

③ 耐用年数の適用誤り(資産区分の誤りを含む)

調査官の見方
  • 「機械装置」と「工具器具備品」の区分。機械装置は業種別の設備の種類で耐用年数が決まるため、業種判定を誤ると年数が大きくずれる
  • 建物本体と建物附属設備の按分。内装工事を一括して建物附属設備(短い年数)としていないか
  • 中古資産の簡便法について、経過年数の計算根拠(初度登録年月、製造年月)の資料があるか
  • 中古資産に対して再取得価額の50%を超える資本的支出をしていないか(簡便法が使えなくなる)
対策
  • 建物の新築・改装時は、業者に建物本体・附属設備・構築物の区分ごとの内訳明細を作成してもらう。調査官としての経験上、建物の建築に限らず内訳の存在しない支払いは、その中身を見れば何らかの誤りがあるのではとの疑念を持ちます。不要な詮索を避けるためにも、可能な限り内訳や明細は残しておくことをおすすめします
  • 中古資産は、初度登録年月日等が確認できる資料(車検証、製造銘板の写真)を台帳に紐づけて保管する
  • 機械装置の設備の種類の判定根拠を、耐用年数省令別表二の該当項目とともにメモに残す

④ 少額減価償却資産の特例の適用

調査官の見方
  • 金額基準を下回らせるために、一体として機能する資産を分割して計上していないか(応接セット、パソコン一式、生産ライン等)
  • 同一資産を分割発注・分割請求させ、1件あたりの金額を引き下げていないか
  • 年間300万円の限度額を超えていないか(事業年度が1年未満の場合の月数按分を含む)
  • 別表十六(七)が添付されているか。添付がなければ適用要件を欠く
  • 貸付けの用に供する資産が含まれていないか(令和4年4月1日以後取得分は原則除外)
  • 令和8年4月1日を跨ぐ事業年度で、3月31日以前取得の資産に40万円基準を誤適用していないか
対策
  • 固定資産台帳に「取得日」「事業供用日」「適用制度」の列を設け、40万円基準/30万円基準の別が一目で分かるようにする
  • 分割発注に見える取引は、業務上の必要性(設置時期が異なる、別拠点で使用する等)を稟議書に記載しておく
  • 従業員数400人以下の要件について、判定時点の在籍者数(パート・アルバイトを含む常時使用する従業員)を記録する
☆ 調査官の本音

よく知られている節税規定ですので、期末に限度額300万円ぎりぎりまで少額資産を取得し、所得を圧縮するケースが見られますが、ここで注意が必要なのは、少額資産の特例もあくまで資産を事業の用に供していなければ適用できないことです。駆け込みで取得したものの開封すらされておらず、適用を否認されたケースも散見されます。

⑤ 特別償却・税額控除の適用要件

調査官の見方
  • 経営力向上計画の認定日が、設備の取得日より後になっていないか
  • 指定事業に該当しない事業(不動産業、娯楽業の一部等)に使用していないか
  • 中古品・貸付用資産を対象としていないか
  • 所有権移転外リース取引により取得した資産に特別償却を適用していないか(税額控除は可)
  • 工業会証明書、経済産業局の確認書などの添付書類が揃っているか
  • 補助金を受けて取得した資産について、圧縮記帳後の金額を基礎に計算しているか
対策
  • 計画認定を要する制度は、設備の発注前に認定を取得するスケジュールを組む。認定には数週間から数か月を要する
  • 証明書・確認書は原本を申告書控えとセットで保管する
  • 補助金・保険金を受領している場合は、圧縮記帳との適用関係を先に整理する
☆ 調査官の本音

意外と多いのが、そもそも制度を適用できない法人(大規模法人の完全子法人や、税額控除を適用できない資本金3,000万円超の法人)が誤って制度を適用しているケースです。租税特別措置に関しては、会計検査院から定期的に制度が正しく運用されているかのチェックが入るため、国税庁としても適用誤りに対しては厳しく対応する必要に迫られているという事情があります。否認された場合の影響も大きい制度ですので、面倒ですが、適用を検討するにあたってはチェックシートを活用するなどして1つ1つ要件充足の適否を確認しましょう。

⑥ 除却・遊休資産

調査官の見方

除却損は現金支出を伴わずに損金を作れるため、実在性が厳しく確認されます。

  • 除却したはずの資産が現場に残っていないか(調査官は工場・倉庫の現物確認を行うことがある)
  • 産業廃棄物管理票(マニフェスト)、廃棄業者の受領書・写真があるか
  • 有姿除却の場合、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないことを客観的に説明できるか
  • 償却資産税の申告から除却資産が落ちているか(落ちていなければ除却の事実が疑われる)
対策
  • 除却時はマニフェストの写しと廃棄前後の写真を必ず取得し、固定資産台帳の除却記録に添付する
  • 有姿除却は、生産ラインの廃止決定に関する取締役会議事録など、意思決定の記録とセットで行う
  • 除却の事実と償却資産税申告のタイミングを一致させる
☆ 調査官の本音

廃棄業者の受領書など客観的な資料がないと、調査官はまず除却の事実を疑い、その資産がまだ使われているのではないか、実は売却して収入を除外しているのではないかとの疑いで見てきます。客観的な資料がない状態で「廃棄して存在しない」ことを証明するのは非常に難しいため、後々のことを考えて資料は必ず残しておきましょう。

⑦ 別表十六と固定資産台帳の整合

調査官の見方

調査の初日に、固定資産台帳・別表十六(一)(二)・総勘定元帳の3点を突合するのは定石です。

  • 償却超過額・償却不足額の繰越管理が正しく行われているか
  • 前期の別表十六の期末帳簿価額と当期の期首帳簿価額が一致しているか
  • 会計上の減価償却費と別表上の償却限度額の差異が調整されているか
  • 償却資産税申告書との資産の突合
対策
  • 決算のたびに、台帳・別表・元帳の3点突合を必ず実施し、差異があれば原因を記録する。誤りを放置すると、後々原因を解明することが難しくなるため、面倒がらず見つけたその時点で解決するようにしましょう
  • 償却超過額は翌期以降の損金算入の権利であるため、繰越額の管理表を別途整備する

総括:調査対応の基本姿勢

資料はすぐに出せる状態にしておく。求められた資料が出てくるまでに時間がかかると、調査官は「他にも整理されていない領域があるはずだ」と判断し、確認範囲を広げます。

判断が分かれる論点については、こちらから先に説明する。「この点はこう判断しました」と根拠を示して説明するほうが、指摘されてから釈明するより、はるかに心証が良くなります。

誤りが見つかった場合は速やかに修正申告に応じる。仮装隠蔽と評価されなければ重加算税(35%〜)ではなく過少申告加算税(原則10%、一定額超は15%)にとどまります。調査通知前の自主的な修正申告であれば加算税は課されません。

一方で、根拠のある処理まで安易に譲る必要はありません。通達・裁決事例を示して主張すべきところは主張する姿勢が、結果として翌期以降の調査頻度にも影響します。

まとめ

✅ まとめ

減価償却は、①取得価額 ②耐用年数 ③償却方法 ④事業供用日という4つの起点が正しく決まって初めて正しい計算ができます。いずれか一つを誤ると、以後すべての年度の償却額が誤りとなります。

令和8年4月1日以後は少額減価償却資産の特例が40万円未満に拡大されますが、判定は「取得日単位」である点に注意が必要です。

税務調査では、事業供用日・資本的支出と修繕費の区分・耐用年数の適用・除却の実在性が定番の確認項目です。いずれも「なぜその処理を選んだのか」を処理時点で資料化しておくことが、最も有効な備えになります。

本記事のご利用にあたって

本記事は2026年8月時点で公表されている法令・通達・税制改正大綱等に基づいて作成した一般的な解説であり、個別の事案に対する税務上の助言を目的とするものではありません。

令和8年度税制改正に関する記述のうち、産業競争力強化法の改正を前提とする制度(特定生産性向上設備等投資促進税制等)については、今後の法整備の状況により内容が変動する可能性があります。適用に際しては、国税庁・財務省・経済産業省・中小企業庁の公表資料により最新の内容をご確認ください。

具体的な適用判断は、必ず税理士等の専門家にご相談ください。

濱名柾明
税理士 濱名柾明
元東京国税局職員(13年・税務調査実績200件超)

東京国税局にて13年間、法人・個人事業者の税務調査に従事。調査官として現場で見てきた実態をもとに、経営者にとって本当に役立つ税務情報を発信している。現在は濱名税理士事務所にて税理士として、税務顧問・税務調査対応・相続税申告等を中心に業務を行う。

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減価償却は、固定資産の取得コストを使用期間にわたって費用配分する処理です。金額が大きく、かつ判断を伴う論点が多いため、法人税調査における定番の確認項目でもあります。この記事では制度の基本から実務上の判断ポイントまでを整理します。

 本記事は2026年8月時点の法令・通達に基づく一般的な解説です。令和8年度税制改正の内容を含みます。

直近の主な改正点

まず、実務上インパクトの大きい直近の改正・変更点を確認しておきましょう。

項目改正・変更内容適用時期
少額減価償却資産の特例
(措法67の5)
取得価額基準を30万円未満 → 40万円未満に引上げ。従業員数要件を500人以下 → 400人以下に引下げ。適用期限を令和11年3月31日まで3年延長。年間300万円の上限は据置き 令和8年4月1日
以後取得分
特定生産性向上設備等
投資促進税制
新設。即時償却または税額控除(原則7%、建物等4%)を選択適用。投資規模の下限は原則35億円以上(中小企業者等は5億円以上) 令和8年度~
DX投資促進税制 廃止(新規の計画認定は終了) 令和7年3月31日
をもって終了
中小企業経営強化税制 C類型(デジタル化設備)廃止、E類型(経営規模拡大設備)新設。B類型の投資利益率要件を年平均5%以上 → 7%以上に引上げ 令和7年4月1日~
償却資産に係る
固定資産税の免税点
課税標準額150万円 → 180万円に引上げ(家屋は20万円 → 30万円) 令和9年度分以後
中小企業投資促進税制 適用期限を令和9年3月31日まで延長(内容は概ね従前どおり) 継続適用中
⚠️

誤りやすいポイント

少額減価償却資産の特例の40万円基準は「事業年度単位」ではなく「取得日単位」で判定します。令和8年3月31日以前に取得した資産は、たとえ令和8年度の申告であっても30万円未満基準(従業員500人以下)で判定します。

12月決算法人や個人事業主は、同一事業年度内に30万円基準と40万円基準が混在するため、固定資産台帳上で取得日による区分管理が必須です。

減価償却とは

基本的な考え方

減価償却とは、固定資産の取得に要したコストを、その資産の使用可能期間(耐用年数)にわたって費用として配分する会計処理をいいます。取得時に一括して費用化するのではなく、収益の獲得に貢献する期間にわたって分割計上することで、費用収益対応の原則を実現します。

たとえば300万円の機械を6年間使用する場合、取得年度に300万円全額を費用計上すると、その年度だけ極端に利益が減少し、翌年度以降は同じ機械が収益を生んでいるのに費用がゼロという不自然な損益になります。減価償却はこの歪みを是正する仕組みです。

減価償却の目的

  • 費用収益対応の原則:資産の使用期間にわたってコストを配分し、各期の損益を適正に表示する
  • 資産価値の適正表示:貸借対照表上の固定資産を実態に即した金額で表示する
  • 自己金融効果:現金支出を伴わない費用であるため、償却額相当の資金が社内に留保される
  • 課税所得の適正化:法人税法上の損金として認められ、キャッシュフローの改善につながる

減価償却の対象となる資産・ならない資産

時の経過または使用によって価値が減少する資産のみが減価償却の対象です。「非減価償却資産」に該当するものを誤って償却すると、全額が償却超過額として否認されます。

区分対象となるもの対象とならないもの
有形固定資産 建物、建物附属設備、構築物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品、船舶、航空機 土地、借地権、電話加入権
無形固定資産 ソフトウェア、特許権、実用新案権、商標権、営業権(のれん) 永久的な権利(借地権等)
生物 牛馬、果樹(成熟後)、茶樹等 販売目的の棚卸資産たる生物
その他 書画骨とう(時の経過で価値が減少しないもの)、建設仮勘定、取得後未稼働の資産

 美術品等については、取得価額が1点100万円未満のものは原則として減価償却資産として取り扱われます(法基通7-1-1)。100万円以上でも、時の経過により価値が減少することが明らかなものは償却可能です。

取得価額の決定

減価償却計算のすべての起点は「取得価額」です。ここを誤ると以後すべての年度の償却額が誤りとなるため、税務調査でも重点的に確認されます。

取得価額に含めるもの・含めなくてよいもの

取扱い具体例
取得価額に算入(必須) 購入代価、引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税、据付費、試運転費、その他事業供用のために直接要した費用
取得価額に算入しないことができる(任意) 不動産取得税、自動車税環境性能割、登録免許税その他登記・登録費用、固定資産税の精算金、契約解除に伴う違約金、建設利息、事業所税、借入金の利子(事業供用前の期間分)
取得価額に算入しない 土地とともに取得した建物の取壊費用(土地の取得価額へ)※取得後おおむね1年以内の取壊しの場合

 「算入しないことができる」項目は、算入しない方が早期の損金算入となり有利ですが、会計処理との整合が必要です。

取得価額の判定単位

10万円・20万円・40万円といった金額基準は、資産の「通常1単位として取引される単位」ごとに判定します。この単位判定は税務調査で最も争点になりやすい論点の一つです。

資産の例判定単位
応接セットテーブルと椅子を1組として判定(バラで買っても1セット)
カーテン1部屋ごとに使用しているカーテン全体で判定
パソコン本体・モニタ・キーボード等を一体として判定(一体で機能するもの)
機械装置1台または1基ごと。ただし生産ラインとして機能するものは全体で判定
書棚・ロッカー同時に多数購入しても1台ごとに判定

耐用年数の決定

法定耐用年数

税務上の耐用年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(耐用年数省令)により資産の種類・構造・用途ごとに定められており、企業が任意に短縮することはできません。

資産の種類構造・用途法定耐用年数
建物鉄骨鉄筋コンクリート造・事務所用50年
建物鉄骨鉄筋コンクリート造・工場用38年
建物木造・事務所用24年
建物木造・店舗用/住宅用22年
建物附属設備電気設備(蓄電池電源設備以外)15年
建物附属設備冷暖房設備(22kW以下)13年
機械装置食料品製造業用設備10年
車両運搬具普通乗用車(一般用)6年
車両運搬具軽自動車(貨物・一般用)4年
工具器具備品電子計算機(パソコン)4年
工具器具備品電子計算機(サーバー用)5年
ソフトウェア自社利用(複写して販売する原本以外)5年
ソフトウェア研究開発用のもの3年

 上表は代表例です。実際の適用にあたっては必ず耐用年数省令の別表を確認してください。

中古資産の耐用年数(簡便法)

中古資産を取得した場合、使用可能期間を見積もることが原則ですが、これが困難な場合には次の簡便法によることができます。

簡便法による耐用年数

【法定耐用年数を全部経過】
耐用年数 = 法定耐用年数 × 20%

【法定耐用年数を一部経過】
耐用年数 =(法定耐用年数 - 経過年数)+ 経過年数 × 20%

いずれも1年未満の端数は切捨て、計算結果が2年未満となる場合は2年とします。

⚠️

簡便法が使えないケース(調査で狙われる論点)

その中古資産の取得価額に対し、「再取得価額の50%」を超える資本的支出を行った場合は、簡便法を適用できず法定耐用年数によることになります(耐令3①但書)。

中古車の耐用年数を短くして早期償却するスキームでは、取得後に大規模な改造を行っているケースが多く、調査官はこの50%基準の充足状況を必ず確認します。

また、事業年度開始後に見積りを行うことなく法定耐用年数で償却を開始した場合、後から簡便法へ変更することはできません(取得事業年度における選択が必要)。

償却方法の選定と計算

資産の種類ごとの選択可能な償却方法

「有形固定資産はすべて定率法」と誤解されがちですが、平成10年度以降の度重なる改正により、建物・建物附属設備・構築物は定額法しか選択できません

資産の種類選択できる償却方法法定償却方法
(届出がない場合)
建物(平成10年4月1日以後取得)定額法のみ定額法
建物附属設備・構築物
(平成28年4月1日以後取得)
定額法のみ定額法
機械装置・車両運搬具・工具器具備品・船舶・航空機定額法 または 定率法定率法
無形固定資産(ソフトウェア等)定額法のみ定額法
生物定額法のみ定額法
リース資産(所有権移転外)リース期間定額法リース期間定額法
鉱業用減価償却資産定額法・定率法・生産高比例法生産高比例法

 個人事業主の場合、法定償却方法は原則として定額法です(法人と異なる点に注意)。

定額法

毎期一定額を償却する方法です。計算が単純で、費用の平準化に適しています。

計算式

償却限度額 = 取得価額 × 定額法の償却率

定額法の償却率は原則として「1 ÷ 耐用年数」を小数点3位で表したものです(耐用年数6年なら0.167)。

計算例:取得価額300万円/耐用年数6年/定額法

年度期首帳簿価額償却限度額期末帳簿価額
1年目3,000,000円501,000円2,499,000円
2年目2,499,000円501,000円1,998,000円
3年目1,998,000円501,000円1,497,000円
4年目1,497,000円501,000円996,000円
5年目996,000円501,000円495,000円
6年目495,000円494,999円1円(備忘価額)

 3,000,000円 × 0.167 = 501,000円。最終年度は備忘価額1円を残して償却を終了します。

定率法(200%定率法)

期首帳簿価額に一定の償却率を乗じる方法で、初期に多額の償却費を計上できます。平成24年4月1日以後に取得した資産については「200%定率法」(定額法償却率の2倍)が適用されます。

計算式

償却限度額 = 期首帳簿価額(未償却残高)× 定率法の償却率

ただし、上記により計算した金額が「償却保証額(=取得価額 × 保証率)」を下回る年度以後は、その年度の期首帳簿価額(改定取得価額)に改定償却率を乗じた一定額を毎期償却します(改定償却)。

計算例:取得価額300万円/耐用年数6年/定率法

耐用年数6年の定率法償却率は0.333、保証率は0.09911、改定償却率は0.334です。償却保証額は 3,000,000円 × 0.09911 = 297,330円 となります。

年度期首帳簿価額調整前償却額償却限度額期末帳簿価額
1年目3,000,000円999,000円999,000円2,001,000円
2年目2,001,000円666,333円666,333円1,334,667円
3年目1,334,667円444,444円444,444円890,223円
4年目890,223円296,444円
< 保証額
297,334円
(改定)
592,889円
5年目592,889円297,334円
(改定)
295,555円
6年目295,555円295,554円1円(備忘価額)

 4年目に調整前償却額296,444円が償却保証額297,330円を下回るため、改定取得価額890,223円 × 改定償却率0.334 = 297,334円で均等償却に切り替わります。

定額法と定率法の比較

比較項目定額法定率法
償却パターン毎期一定額初期に多く、逓減していく
初期の節税効果小さい大きい
計算の複雑さ単純改定償却の判定が必要
会計上の利益への影響平準的初期に大きく圧迫
適した場面収益が安定的に発生する資産(建物等)陳腐化が早い資産、早期の投資回収を図る場合
トータルの償却額同額(1円を残して全額償却)同額(1円を残して全額償却)

償却方法の届出と変更

  • 届出:新設法人は設立第1期の確定申告書の提出期限までに「減価償却資産の償却方法の届出書」を提出します。提出がなければ法定償却方法が適用されます。
  • 変更:償却方法を変更しようとする事業年度開始の日の前日までに「変更の承認申請書」を提出し、税務署長の承認を受ける必要があります。
  • 原則として、現在の方法を採用してから3年を経過していない場合、変更は認められにくい取扱いです。

事業年度の中途で取得した場合

月割計算

償却限度額 = 年間の償却限度額 × 事業供用月数 ÷ 事業年度の月数

月数は暦に従って計算し、1月未満の端数は1月として切り上げます。起算点は「取得日」ではなく「事業の用に供した日」である点が極めて重要です。

少額減価償却資産の取扱い

取得価額が少額の資産には、通常の減価償却に代えて早期に損金算入できる複数の制度が用意されています。有利不利の判断のためには、金額帯ごとの選択肢を整理しておく必要があります。

取得価額選択できる処理根拠・要件
10万円未満 ① 全額損金算入
② 一括償却資産(3年)
③ 通常の減価償却
法令133。使用可能期間1年未満のものも同様
10万円以上
20万円未満
① 一括償却資産(3年均等)
② 少額特例(全額損金)
③ 通常の減価償却
法令133の2 / 措法67の5
20万円以上
40万円未満
① 少額特例(全額損金)
② 通常の減価償却
措法67の5(令和8年4月1日以後取得。それ以前は30万円未満)
40万円以上 通常の減価償却のみ 特別償却等の適用可能性を別途検討

中小企業者等の少額減価償却資産の特例(措法67の5)

要件・内容令和8年3月31日以前取得令和8年4月1日以後取得
取得価額基準30万円未満40万円未満
常時使用する従業員数500人以下400人以下
年間損金算入限度額300万円300万円(変更なし)
適用期限令和11年3月31日まで
その他の要件青色申告書提出の中小企業者等(資本金1億円以下等)/貸付用資産は原則除外/別表十六(七)の添付が必要同左
⚠️

実務上の留意点

適用にあたっては、確定申告書に「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書(別表十六(七))」の添付が必須です。添付漏れは適用要件を欠くものとして否認対象になります。

令和4年4月1日以後に取得した「主要な事業として行われるもの以外の貸付けの用に供する資産」は、少額資産(10万円未満)・一括償却資産・少額特例のいずれからも除外されています。節税目的のドローン・LED・足場等のレンタルスキームを封じる改正です。

300万円の限度額は、事業年度が1年未満の場合、月数按分されます。

一括償却資産

取得価額20万円未満の資産は、その事業年度に取得したものを一括して、3年間で均等償却することができます。

計算式

損金算入限度額 = 一括償却対象額の合計 × その事業年度の月数 ÷ 36

  • 事業年度の中途で取得しても月割計算は不要(12か月分を計上できる)
  • 償却資産税(固定資産税)の課税対象外となるメリットがある
  • 途中で除却・売却しても、除却損は計上できず3年間の均等償却を継続する

特別償却・税額控除(租税特別措置)

政策目的に基づき、通常の償却(普通償却)に加えて割増しの償却を認める、あるいは税額から直接控除する制度が設けられています。適用期限のある時限措置であり、最新の内容を必ず確認してください。

現在活用できる主な制度(2026年8月時点)

制度名優遇内容適用期限・主な要件
中小企業投資促進税制 30%の特別償却 または 7%の税額控除 令和9年3月31日まで。税額控除は資本金3,000万円以下の法人・個人が対象。新品の機械装置(1台160万円以上)等。中古・貸付用は対象外
中小企業経営強化税制
(A・B・D類型)
即時償却 または 10%の税額控除(資本金3,000万円超は7%) 令和9年3月31日まで。設備取得前に経営力向上計画の認定が必要。B類型の投資利益率要件は年平均7%以上に厳格化
中小企業経営強化税制
(E類型:経営規模拡大設備)
機械装置等は即時償却/建物等は15%の特別償却(特定建物等は25%)または1%(同2%)の税額控除 令和7年度新設。売上高100億円超を目指す中小企業向け。取得価額1,000万円以上の建物・附属設備が対象に追加
特定生産性向上設備等
投資促進税制
即時償却 または 税額控除(原則7%、建物等4%) 令和8年度創設。経済産業大臣の確認が必要。投資規模の下限は原則35億円以上(中小企業者等は5億円以上)。税額控除限度は法人税額の20%、超過額は3年繰越可
カーボンニュートラル
投資促進税制
特別償却 または 税額控除 要件を厳格化のうえ2年延長
⚠️

廃止された制度(過去の資料をそのまま使わないこと)

DX投資促進税制:令和7年3月31日をもって廃止されました。新規の事業適応計画の認定は行われていません。

5G導入促進税制:同じく令和7年3月31日取得分をもって終了しています。

中小企業経営強化税制のC類型(デジタル化設備):令和7年度税制改正により令和7年4月1日をもって廃止されました。

特別償却と税額控除の選択

両者は選択適用であり、どちらが有利かは利益水準と将来の見通しによって決まります。

観点特別償却税額控除
効果の性質課税の繰延べ(トータルの償却額は変わらない)税額の永久的な減少
有利な場面当期に利益が集中し、翌期以降は減益見込み安定的に利益が出ている
キャッシュフロー初年度に大きく改善するが、翌期以降は償却費が減少初年度の減税額は小さいが恒久的
適用制限特になし法人税額の20%が上限(超過額は1年繰越可)
会計処理剰余金処分方式(準備金)も選択可税効果への影響なし

実務上は、当期を含めた3期程度の利益シミュレーションを作成して比較検討することが望まれます。繰越欠損金がある場合は特別償却をしても税負担が変わらないため、税額控除(またはいずれも適用しない)という判断になります。

資本的支出と修繕費の区分

既存の固定資産に対する支出が「修繕費」(当期の損金)か「資本的支出」(資産計上して減価償却)かの判定は、税務調査における最頻出の論点です。判定を誤ると多額の否認につながります。

基本的な区分

区分内容処理
修繕費通常の維持管理、または毀損した資産の原状回復のための支出支出事業年度の損金
資本的支出資産の使用可能期間を延長させる部分、または資産の価額を増加させる部分に対応する支出資産計上し、減価償却

判定フロー(法人税基本通達7-8-1〜7-8-5)

実務上は次の順序で判定します。上位のステップで判定がついた時点で確定します。

  1. 災害等により被害を受けた資産の原状回復費用か → 原状回復部分は修繕費
  2. 明らかに資本的支出(用途変更のための改造、避難階段の取付け、機械の部品を品質・性能の高いものに取り替えた場合の差額等)に該当するか
  3. 明らかに修繕費(建物の移えい・解体移築、機械の移設、地盤沈下による地盛り等)に該当するか
  4. その支出額が20万円未満か → 修繕費として処理可(形式基準)
  5. おおむね3年以内の周期で行われる修理・改良か → 修繕費として処理可(形式基準)
  6. その支出額が60万円未満、または前期末取得価額のおおむね10%相当額以下か → 修繕費として処理可
  7. 上記で判定できない場合 → 継続適用を条件に、支出額の30%と前期末取得価額の10%のいずれか少ない金額を修繕費、残額を資本的支出とすることができる(7:3基準)

この論点については、テーマ3-③「資本的支出と修繕費の区別について」でも詳しく解説しています。

資本的支出後の償却

  • 原則:資本的支出の額を「新たな減価償却資産の取得」とみなし、既存資産と同じ種類・耐用年数の資産として区分して償却する
  • 特例①:平成19年3月31日以前取得の既存資産に対する資本的支出は、既存資産の取得価額に加算する方法も可
  • 特例②:定率法適用資産に対する資本的支出は、翌事業年度開始時に既存資産と資本的支出を合算して1つの資産とすることができる

元国税調査官の視点

減価償却は、金額が大きく、かつ判断を伴う論点が多いため、法人税調査における定番の確認項目です。ここでは調査官がどのような着眼点で資料を確認するのか、そして納税者側でどのような備えをしておくべきかを整理します。

調査官の基本的な発想

調査官は「取引の実態と申告書の数字が一致しているか」を、証憑という客観的な資料で検証します。減価償却の分野では、意図的な仮装隠蔽よりも、判断の誤りや証憑の不備による否認が圧倒的に多いのが実情です。

したがって最大の対策は、「なぜその処理を選んだのか」を、処理をした時点で資料化しておくことに尽きます。調査時に慌てて説明を組み立てるのではなく、当時の判断過程が残っている状態を作っておくことが重要です。

① 事業供用日

調査官の見方

減価償却の開始は「取得日」ではなく「事業の用に供した日」です。特に決算期末直前に取得した資産について、調査官は次のような資料を突き合わせます。

  • 請求書・納品書の日付と、検収書・受領印の日付のズレ
  • 据付工事・電気工事の完了報告書、試運転記録の日付
  • 機械の稼働ログ、生産日報、シフト表
  • 車両の場合は自動車検査証の登録日、ナンバー交付日、ETC・給油の履歴
  • ソフトウェアの場合は本番稼働の稟議・議事録、ユーザーアカウント発行日
  • 固定資産税(償却資産)申告書の記載内容との整合
対策
  • 期末近くの取得資産については、事業供用日を裏づける資料(写真、検収書、稼働ログ)を取得の都度セットで保存する運用を行う
  • 倉庫に保管したまま年度をまたいだ資産は、正直に翌期からの償却開始とする。このような資産について使用していた旨の説明を行うことは非常に困難です
  • 建設仮勘定から本勘定へ振り替えた日付と、実際の稼働開始日の整合を確認しておく

② 資本的支出と修繕費の区分

調査官の見方

修繕費として一括計上された多額の支出は、必ず内訳を確認されます。総額だけの請求書は「内訳が確認できない=資本的支出の可能性を否定できない」と評価されやすく、不利に働きます。

  • 工事の見積書・仕様書を取り寄せ、原状回復か機能向上かを工事項目ごとに判定する
  • 外壁塗装で従前より高グレードの塗料(フッ素系等)に変更していないか
  • 空調・照明の更新で能力・省エネ性能が向上していないか
  • 間取り変更、用途変更を伴う内装工事が混在していないか
  • 形式基準(20万円未満・3年周期・60万円未満)の適用にあたり、支出単位を恣意的に分割していないか
対策
  • 工事業者に対し、見積書・請求書の内訳を「原状回復部分」「機能向上部分」に分けて記載してもらう。第三者が作成した資料に記載があるというだけで、調査官はその記載が正しいとの印象を持つものです。これだけで争点が大幅に減ります
  • 工事前後の写真を残す。原状回復であることの強い証拠になる
  • 判定に迷った支出は、判定フローのどのステップで結論を出したかを記録したメモを稟議書に添付する
  • 一度採用した処理方法(特に7:3基準)は継続適用する。年度によって都合よく変えると、恣意性を指摘される
☆ 調査官の本音

何をもって機能の向上、価値の向上といえるかについては、実は調査官自身も明確な根拠を持っていないことがほとんどです。請求書などの記載ぶりや金額の大きさなどから直感的に資本的支出に該当するものと考えているのが実情です。会社の事業内容や使用している事業用資産のことを一番よくわかっているのは会社内部の人間ですので、その支出があくまで資産本来の機能・効用を維持するための支出であることを自信をもって説明すれば、案外調査官の追及も楽にかわせるものです。

③ 耐用年数の適用誤り(資産区分の誤りを含む)

調査官の見方
  • 「機械装置」と「工具器具備品」の区分。機械装置は業種別の設備の種類で耐用年数が決まるため、業種判定を誤ると年数が大きくずれる
  • 建物本体と建物附属設備の按分。内装工事を一括して建物附属設備(短い年数)としていないか
  • 中古資産の簡便法について、経過年数の計算根拠(初度登録年月、製造年月)の資料があるか
  • 中古資産に対して再取得価額の50%を超える資本的支出をしていないか(簡便法が使えなくなる)
対策
  • 建物の新築・改装時は、業者に建物本体・附属設備・構築物の区分ごとの内訳明細を作成してもらう。調査官としての経験上、建物の建築に限らず内訳の存在しない支払いは、その中身を見れば何らかの誤りがあるのではとの疑念を持ちます。不要な詮索を避けるためにも、可能な限り内訳や明細は残しておくことをおすすめします
  • 中古資産は、初度登録年月日等が確認できる資料(車検証、製造銘板の写真)を台帳に紐づけて保管する
  • 機械装置の設備の種類の判定根拠を、耐用年数省令別表二の該当項目とともにメモに残す

④ 少額減価償却資産の特例の適用

調査官の見方
  • 金額基準を下回らせるために、一体として機能する資産を分割して計上していないか(応接セット、パソコン一式、生産ライン等)
  • 同一資産を分割発注・分割請求させ、1件あたりの金額を引き下げていないか
  • 年間300万円の限度額を超えていないか(事業年度が1年未満の場合の月数按分を含む)
  • 別表十六(七)が添付されているか。添付がなければ適用要件を欠く
  • 貸付けの用に供する資産が含まれていないか(令和4年4月1日以後取得分は原則除外)
  • 令和8年4月1日を跨ぐ事業年度で、3月31日以前取得の資産に40万円基準を誤適用していないか
対策
  • 固定資産台帳に「取得日」「事業供用日」「適用制度」の列を設け、40万円基準/30万円基準の別が一目で分かるようにする
  • 分割発注に見える取引は、業務上の必要性(設置時期が異なる、別拠点で使用する等)を稟議書に記載しておく
  • 従業員数400人以下の要件について、判定時点の在籍者数(パート・アルバイトを含む常時使用する従業員)を記録する
☆ 調査官の本音

よく知られている節税規定ですので、期末に限度額300万円ぎりぎりまで少額資産を取得し、所得を圧縮するケースが見られますが、ここで注意が必要なのは、少額資産の特例もあくまで資産を事業の用に供していなければ適用できないことです。駆け込みで取得したものの開封すらされておらず、適用を否認されたケースも散見されます。

⑤ 特別償却・税額控除の適用要件

調査官の見方
  • 経営力向上計画の認定日が、設備の取得日より後になっていないか
  • 指定事業に該当しない事業(不動産業、娯楽業の一部等)に使用していないか
  • 中古品・貸付用資産を対象としていないか
  • 所有権移転外リース取引により取得した資産に特別償却を適用していないか(税額控除は可)
  • 工業会証明書、経済産業局の確認書などの添付書類が揃っているか
  • 補助金を受けて取得した資産について、圧縮記帳後の金額を基礎に計算しているか
対策
  • 計画認定を要する制度は、設備の発注前に認定を取得するスケジュールを組む。認定には数週間から数か月を要する
  • 証明書・確認書は原本を申告書控えとセットで保管する
  • 補助金・保険金を受領している場合は、圧縮記帳との適用関係を先に整理する
☆ 調査官の本音

意外と多いのが、そもそも制度を適用できない法人(大規模法人の完全子法人や、税額控除を適用できない資本金3,000万円超の法人)が誤って制度を適用しているケースです。租税特別措置に関しては、会計検査院から定期的に制度が正しく運用されているかのチェックが入るため、国税庁としても適用誤りに対しては厳しく対応する必要に迫られているという事情があります。否認された場合の影響も大きい制度ですので、面倒ですが、適用を検討するにあたってはチェックシートを活用するなどして1つ1つ要件充足の適否を確認しましょう。

⑥ 除却・遊休資産

調査官の見方

除却損は現金支出を伴わずに損金を作れるため、実在性が厳しく確認されます。

  • 除却したはずの資産が現場に残っていないか(調査官は工場・倉庫の現物確認を行うことがある)
  • 産業廃棄物管理票(マニフェスト)、廃棄業者の受領書・写真があるか
  • 有姿除却の場合、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないことを客観的に説明できるか
  • 償却資産税の申告から除却資産が落ちているか(落ちていなければ除却の事実が疑われる)
対策
  • 除却時はマニフェストの写しと廃棄前後の写真を必ず取得し、固定資産台帳の除却記録に添付する
  • 有姿除却は、生産ラインの廃止決定に関する取締役会議事録など、意思決定の記録とセットで行う
  • 除却の事実と償却資産税申告のタイミングを一致させる
☆ 調査官の本音

廃棄業者の受領書など客観的な資料がないと、調査官はまず除却の事実を疑い、その資産がまだ使われているのではないか、実は売却して収入を除外しているのではないかとの疑いで見てきます。客観的な資料がない状態で「廃棄して存在しない」ことを証明するのは非常に難しいため、後々のことを考えて資料は必ず残しておきましょう。

⑦ 別表十六と固定資産台帳の整合

調査官の見方

調査の初日に、固定資産台帳・別表十六(一)(二)・総勘定元帳の3点を突合するのは定石です。

  • 償却超過額・償却不足額の繰越管理が正しく行われているか
  • 前期の別表十六の期末帳簿価額と当期の期首帳簿価額が一致しているか
  • 会計上の減価償却費と別表上の償却限度額の差異が調整されているか
  • 償却資産税申告書との資産の突合
対策
  • 決算のたびに、台帳・別表・元帳の3点突合を必ず実施し、差異があれば原因を記録する。誤りを放置すると、後々原因を解明することが難しくなるため、面倒がらず見つけたその時点で解決するようにしましょう
  • 償却超過額は翌期以降の損金算入の権利であるため、繰越額の管理表を別途整備する

総括:調査対応の基本姿勢

資料はすぐに出せる状態にしておく。求められた資料が出てくるまでに時間がかかると、調査官は「他にも整理されていない領域があるはずだ」と判断し、確認範囲を広げます。

判断が分かれる論点については、こちらから先に説明する。「この点はこう判断しました」と根拠を示して説明するほうが、指摘されてから釈明するより、はるかに心証が良くなります。

誤りが見つかった場合は速やかに修正申告に応じる。仮装隠蔽と評価されなければ重加算税(35%〜)ではなく過少申告加算税(原則10%、一定額超は15%)にとどまります。調査通知前の自主的な修正申告であれば加算税は課されません。

一方で、根拠のある処理まで安易に譲る必要はありません。通達・裁決事例を示して主張すべきところは主張する姿勢が、結果として翌期以降の調査頻度にも影響します。

まとめ

✅ まとめ

減価償却は、①取得価額 ②耐用年数 ③償却方法 ④事業供用日という4つの起点が正しく決まって初めて正しい計算ができます。いずれか一つを誤ると、以後すべての年度の償却額が誤りとなります。

令和8年4月1日以後は少額減価償却資産の特例が40万円未満に拡大されますが、判定は「取得日単位」である点に注意が必要です。

税務調査では、事業供用日・資本的支出と修繕費の区分・耐用年数の適用・除却の実在性が定番の確認項目です。いずれも「なぜその処理を選んだのか」を処理時点で資料化しておくことが、最も有効な備えになります。

本記事のご利用にあたって

本記事は2026年8月時点で公表されている法令・通達・税制改正大綱等に基づいて作成した一般的な解説であり、個別の事案に対する税務上の助言を目的とするものではありません。

令和8年度税制改正に関する記述のうち、産業競争力強化法の改正を前提とする制度(特定生産性向上設備等投資促進税制等)については、今後の法整備の状況により内容が変動する可能性があります。適用に際しては、国税庁・財務省・経済産業省・中小企業庁の公表資料により最新の内容をご確認ください。

具体的な適用判断は、必ず税理士等の専門家にご相談ください。

濱名柾明
税理士 濱名柾明
元東京国税局職員(13年・税務調査実績200件超)

東京国税局にて13年間、法人・個人事業者の税務調査に従事。調査官として現場で見てきた実態をもとに、経営者にとって本当に役立つ税務情報を発信している。現在は濱名税理士事務所にて税理士として、税務顧問・税務調査対応・相続税申告等を中心に業務を行う。

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