法律上、相続は故人が亡くなった瞬間に発生します。相続税の申告期限は相続の発生から10ヶ月後と定められており、その間にやるべきことは数多くあります。実際に動き出せるのは四十九日の法要後からというケースも多く、スケジュールはタイトです。大まかな流れを順番に解説します。
故人の遺産を相続する権利のある人を把握する手続きです。具体的には、故人の戸籍を最新のものから出生時まで遡って調べていきます。実は前妻との子がいた、というケースもまれにあります。
遺産分割協議などは相続人全員が揃わなければ無効ですし、預金や不動産の名義変更を行う際にも自身が相続人であることを客観的に証明する必要があります。「一緒に暮らしてきた家族が相続人に決まっている」というお気持ちは理解できますが、きわめて重要な手続きです。
また、故人が遺言書を残していたかどうかもここで確認します。生前お世話になった相続人以外の方に遺産の一部を残したいとの意思表示があった場合、その方も今後の手続きの当事者として参加してもらう必要があるからです。
故人の残した財産を把握する作業です。自宅や生活用の預金口座などは比較的容易に確認できますが、投資していた株式や結婚前に使っていた預金口座などは把握が難しいことがあります。
財産の把握は「これを見れば必ず確認できる」という確かな手掛かりがないものも多く、残された資料から探っていくしかありません。経験が物を言うところでもあるため、税理士などの専門家の力を借りることをご検討ください。
確定させた遺産について、相続人間でどのように分け合うかを話し合う手続きです。法定相続分という民法上の割合は存在しますが、各相続人の仕事内容・生活状況・生前の故人との関係性などを考慮し、相続人全員が納得できる内容で合意することが最も大切です。
・故人と一緒に事業を営んでいた親族 → 事業用資産を相続した方が営業に支障が出にくい
・生前に故人の介護・世話をした親族 → 法定相続分よりも多くの財産を分け与える選択肢もある
遺産分割の前提として、②で把握した財産を正しく評価することが重要です。現預金や上場株式は客観的な評価尺度がありますが、不動産・非上場株式・貴金属・骨董品などは評価が難しく、正しく評価しなければ公平な分割が実現しません。これらは相続税法の規定に基づき評価します。
なお、分割の仕方によって最終的な相続税の負担も変わるため、2次相続のことも見据えながら、税負担・各相続人の事情を総合的に考慮して分割方法を決定します。故人が遺言書を残していた場合、遺産分割に関する記載があるときは原則として故人の遺志に従う必要があります。
遺産分割協議が終了したら、遺産分割協議書という形で書面に残します。整った協議内容を後から蒸し返すといった紛争を防ぐ意味もありますが、相続税申告の添付書類や不動産の移転登記にも使用するため、必ず作成します。
決まった形式はないものの、相続する財産とその分割の内容を明らかにする記載が求められます。財産が多い場合や分割内容が複雑な場合は、専門家の力を借りることをおすすめします。
いよいよ最後の手続きです。税理士の本業とするところですが、主な難所は以下の2つです。
・使えるはずの特例を使わない → 税負担の増加
・使えないはずの特例を使って申告 → 税務調査リスク
両面から慎重な判断が求められます。
この2つの難所をクリアすれば、申告ソフトを使って申告書類を作成し、相続人の連名で故人の住所地を管轄する税務署に提出します。
- 相続税の申告・納税期限は相続発生から10ヶ月後。早めの着手が重要
- ①相続人の確定では戸籍の遡り調査と遺言書の確認が必須。法定相続情報一覧図の取得も有効
- ②財産の確定では名義預金の申告漏れに注意。税務調査で最も指摘されやすいポイント
- ③遺産分割協議では法定相続分にとらわれず、各相続人の事情と2次相続まで見据えた分割を
- ⑤相続税申告の難所は財産評価と特例制度の判断。専門家への相談をご検討ください
ここで触れた内容は、各手続きで求められるポイントのほんの一部です。より深く知りたい方は、随時公開していく解説記事をご覧ください。また、相続に関するお悩みがあれば、ご遠慮なく当事務所までお問い合わせください。