シリーズ:重加算税制度について考える
重加算税制度は、現行租税制度における最も重いペナルティの一つです。本シリーズでは、その制度趣旨・賦課要件を深掘りし、理論と実務の両面から考察を展開します。第1回目は、すべての考察の土台となる重加算税制度の制度趣旨を取り上げます。
重加算税とは
国税通則法68条に規定する重加算税制度は、租税逋脱犯に対する罰金刑等を除けば、現行租税制度における最も重いペナルティといえます。
だからこそ、本来はその賦課要件を課税庁・納税者(実務上は税理士等の代理人)双方がよく理解し、厳格な運用がなされるべきです。しかし、国税職員として見てきた実態は、必ずしもそのようなものではありませんでした。
📌 本シリーズのねらい
重加算税の制度趣旨・賦課要件の深掘り、誤解されがちな要件の解説、そして制度のあるべき姿と現行実務との乖離状況——これらを理論と実務の両面から考察していきます。
昭和45年最高裁判決が示した制度趣旨
重加算税制度の制度趣旨に触れた有名な最高裁判決があります。昭和45年9月11日最高裁第二小法廷判決です。
📖 最高裁昭和45年9月11日第二小法廷判決(要旨)
「国税通則法68条に規定する重加算税は、同法65条ないし67条に規定する各種の加算税を課すべき納税義務違反が課税要件事実を隠ぺいし、または仮装する方法によって行なわれた場合に、行政機関の行政手続により違反者に課せられるもので、①これによってかかる方法による納税義務違反の発生を防止し、もって徴税の実を挙げようとする趣旨に出た②行政上の措置である。」
①・②それぞれのポイント
① 抑止力としての機能
重いペナルティを課すことにより、納税義務違反(隠ぺい・仮装の行為)を企図する者への抑止力として機能することが予定されている。
② 行政上の措置
重加算税の賦課はあくまで行政上の措置(処分)であることが明示されている。刑事罰とは異なる性質を持つ。
「刑罰とは異なる」という意義
同判決はさらに、以下のように判示しています。
📖 同判決(続き)
「違反者の不正行為の反社会性ないし反道徳性に着目してこれに対する制裁として科せられる刑罰とは趣旨、性質を異にするものと解すべき」
すなわち、重加算税は行政上の措置であり、保護法益の侵害と行為の加罰的違法性を根拠に課される罰金刑等の刑罰とは性質が異なるものとして、憲法39条(二重処罰の禁止)に反しないと結論づけています。
⚖️ 憲法39条との関係:重加算税と刑事罰の両方が科されても「二重処罰」にはあたらない——これは、重加算税が行政上の措置であり、刑罰とは制度的に区別されるためです。
制度趣旨のまとめ
重加算税制度の制度趣旨
隠ぺい又は仮装の行為による納税義務違反を行った者に対して
金銭的負担(行政上の措置)を課すことにより、
納税義務違反の発生を防止・抑止することにある
金銭的負担(行政上の措置)を課すことにより、
納税義務違反の発生を防止・抑止することにある
一見シンプルな制度趣旨ですが、次回以降、重加算税の賦課要件や現行実務の状況を検討するにあたり、常に立ち返るべき基礎となるものです。
✅ まとめ
重加算税制度の制度趣旨は、昭和45年最高裁判決により明確に示されています。①隠ぺい・仮装による納税義務違反への抑止力として機能し、②あくまで行政上の措置であって刑罰とは性質を異にする——この2点が、今後の考察の土台となります。