減価償却について

前回のテーマ「費用の計上について」では、債務確定の3要件を満たしたものは費用計上できるとお話しました。ただし、これにはいくつかの例外があります。その代表例が減価償却費です。

減価償却とは

Definition
固定資産の取得コストを、その資産の耐用年数にわたって分割して費用計上する会計処理のこと。一度に多額の費用を計上するのではなく、使用期間にわたって配分することで、収益と費用の対応関係を適切に表現する。
📌 具体例

100万円で購入した機械を5年間使用する場合、毎年20万円ずつ費用に計上します。その機械が生み出す収益とコストが対応し、より正確な損益計算が可能になります。

減価償却の4つの目的

📊
費用・収益の対応

資産の使用期間にわたってコストを配分し、各期の損益を適正に表示する

🏢
資産価値の適正表示

貸借対照表上の固定資産の価値を実態に即して表示する

💰
内部留保と設備更新

費用計上により利益を圧縮し、将来の設備更新のための資金を確保する

🛡️
税務上の損金算入

法人税法上の損金として認められ、節税効果をもたらす

減価償却の対象となる資産

すべての固定資産が対象になるわけではありません。時間の経過によって価値が減少する資産のみが対象です。

区分対象となるもの対象外
有形固定資産 建物、機械装置、車両、工具器具備品など 土地(価値が減少しない)
無形固定資産 ソフトウェア、特許権、商標権、のれんなど 書画・骨とう品(美術品等)
生物資産 果樹、育成中の牛・豚など 観賞用・娯楽用の生物

法定耐用年数

税務上の耐用年数は財務省令で資産の種類ごとに定められており、企業が独自に設定することはできません。

資産の種類具体例耐用年数
建物(鉄骨鉄筋コンクリート造)事務所・工場50年
建物(木造)事務所・工場22年
機械装置食品製造業用設備10年
車両(普通乗用車)社用車6年
工具器具備品パソコン・サーバー4年
ソフトウェア(市場販売目的以外)業務用システム5年

中古資産の耐用年数(簡便法)

区分計算式
法定耐用年数の全部を経過した資産 法定耐用年数 × 20%
法定耐用年数の一部を経過した資産 (法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%
※ 計算した耐用年数が2年未満の場合は、2年として取り扱います。

主な償却方法

📐 定額法(straight-line method)

毎年同額の減価償却費を計上する方法。計算がシンプルで資産管理が容易。

年間償却額 = 取得価額 × (1 ÷ 耐用年数)
📉 定率法(declining balance method)

期首帳簿価額に一定率をかける方法。初期ほど多く費用計上でき、早期費用化に有利。現行法では「200%定率法」を採用。

年間償却額 = 期首帳簿価額 × (1 ÷ 耐用年数 × 200%)

定額法 — 計算例

取得価額 300万円・耐用年数6年の車両(普通乗用車)を定額法で償却する場合

年度期首帳簿価額償却額(300万×1/6)期末帳簿価額
1年目3,000,000円500,000円2,500,000円
2年目2,500,000円500,000円2,000,000円
3年目2,000,000円500,000円1,500,000円
4年目1,500,000円500,000円1,000,000円
5年目1,000,000円500,000円500,000円
6年目500,000円499,000円 ※1,000円(備忘価額)
※ 最終年度は備忘価額(1円)を残して償却

定率法 — 計算例

取得価額 300万円・耐用年数6年(償却率 0.333)の車両を定率法で償却する場合

年度期首帳簿価額償却額期末帳簿価額
1年目3,000,000円999,000円2,001,000円
2年目2,001,000円666,333円1,334,667円
3年目1,334,667円444,444円890,223円
4年目890,223円296,444円593,779円
5年目593,779円296,444円(均等)297,335円
6年目297,335円296,335円(均等)1,000円(備忘価額)
※ 定率法では「償却保証額」を下回った年度から均等償却(改定償却)に切り替わります。

定額法・定率法の比較

比較項目定額法定率法
年間償却額毎年一定初期ほど多く、逓減
計算の複雑さシンプルやや複雑(改定償却あり)
初期の節税効果小さい大きい
適した資産建物・無形固定資産機械・車両など
法人のデフォルト建物・無形資産は定額のみ有形固定資産は定率法

少額資産・特別償却の特例

少額減価償却資産の特例

区分取得価額の基準処理方法
少額の減価償却資産 10万円未満(または使用可能期間1年未満) 全額を費用(損金)に算入
一括償却資産 10万円以上20万円未満 3年均等償却
中小企業者等の少額特例 中小企業向け 40万円未満(年間合計300万円以内) 全額を費用に算入(特例)

特別償却・割増償却

租税特別措置法による特別償却制度では、通常の減価償却に加えて初年度に割増して償却費を計上できます。

  • 30%特別償却 中小企業投資促進税制:機械装置等の取得に対して
  • 最大40%特別償却 DX投資促進税制:デジタル化に資する設備投資に対して
  • 50%特別償却 カーボンニュートラル投資促進税制:脱炭素化対応設備に対して

実務上の注意点

📋 償却方法の選択と届出

法人は償却方法を選択して税務署に届出をする必要があります。届出がない場合は法定の方法が適用されます。

・届出先:所轄税務署長
・届出期限:適用事業年度の確定申告書の提出期限まで
・変更:変更しようとする事業年度の開始日の前日までに申請が必要

📅 事業年度の中途で取得した場合

事業年度の途中で資産を取得した場合は、使用開始月から事業年度末までの月数で按分します。

月割償却額 = 年間償却額 × 使用月数 ÷ 12
🔄 圧縮記帳との関係

国庫補助金や保険差益等を受領した際に圧縮記帳を行うと、取得価額を圧縮した後の金額が減価償却の基礎となります。毎年の償却費が少なくなる点に注意が必要です。

🔧 資本的支出と修繕費の区別
区分内容会計処理
資本的支出 資産の価値を高め、または耐用年数を延長させるもの 資産計上し、減価償却
修繕費 原状回復のための支出(維持・修繕) 当期費用として計上

※ 詳しくは別の機会に解説します。

✅ まとめ
  • 減価償却は固定資産のコストを耐用年数にわたって配分する費用計上の仕組みである
  • 法定耐用年数は資産の種類ごとに省令で定められており、任意に変更できない
  • 主な償却方法は「定額法」と「定率法」で、それぞれ特徴と適した資産が異なる
  • 少額資産の即時償却や特別償却制度を活用することで、初年度の費用を大きく計上できる
  • 事業年度中途取得の月割計算や、資本的支出との区別など、実務上の注意点も多い
減価償却の適切な活用は、キャッシュフローの改善や投資判断にも直結します。自社の状況に応じた最適な方法を選択したい場合は、専門家に相談することをお勧めします。